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アングル:生ごみ問題に苦悩するジャカルタ、昆虫活用の事業者も

ロイター / 2023年12月17日 8時17分

 養殖昆虫を活用したごみ処理事業を起こし、人口1000万人を超えるインドネシアの首都ジャカルタを近年悩ませている大量のごみ問題の解決に奮闘している男性がいる。写真は海岸を覆うごみを拾い集める男性。2021年6月、ジャカルタで撮影(2023年 ロイター/Willy Kurniawan)

Michael Taylor

[ベカシ(インドネシア) 13日 トムソン・ロイター財団] - 養殖昆虫を活用したごみ処理事業を起こし、人口1000万人を超えるインドネシアの首都ジャカルタを近年悩ませている大量のごみ問題の解決に奮闘している男性がいる。

2018年に「マガラーバ社」を立ち上げたレンドリア・ラブデ氏(32)が大事に養殖しているのは、アメリカミズアブの幼虫。生ごみを分解してくれるこの幼虫は、その後、家畜や魚の飼料として販売される。

現在、ジャカルタで発生するごみは、近郊の都市ベカシにあるバンター・ゲバング埋め立て処分場に運ばれるが、処理能力は限界に近づいている。

そこで、ラブデ氏はアメリカミズアブの幼虫の活用を思い立った。「地元で育った1人として、市にとって何が一番大きな問題かを見渡した結果、ごみを何とかしなければならなくなった」と語る。

マガラーバ社は市内から生ごみを回収し、処理施設でアメリカミズアブの幼虫にえさとして与えている。こうしたえさを食べた幼虫はタンパク質たっぷりで、オーガニックの飼料になるわけだ。

同社は現在、1日当たり5―6トンの生ごみを引き受け、250キログラムの飼料化した幼虫を生産している。

全ての始まりは16年にラブデ氏がバンター・ゲバング処理場の運営状況のひどさを実際に見て、もっと適切な方法を見つけようと決心したことだ。

ジャカルタ市民の資産と人口は近年急増しており、ゴミ収集やリサイクルサービスといった重要インフラの整備がなかなか追いつかない。

多くのインドネシアの都市では、道路清掃や資源ごみの分別、時にはリサイクル事業まで非正規労働者に依存し、残りは道路脇で焼却したり、水路に投棄したりするケースも多い。

最終的にはほとんどが埋め立て処分場行きとなるが、世界全体のメタン排出量の約11%が埋め立て処分場から発生する。世界銀行によると、世界の総人口が増えるのに伴って50年までに排出量は約70%増加する見込みだ。

世界的な循環経済創出に取り組む非営利団体の関係者は、適切に設計されていない処分場は地下水を汚染しかねず、温室効果ガスを大気中に排出するし、埋め立て処分場で起きる火災は健康に悪影響を及ぼすと指摘した。

バンター・ゲバング処理場を訪れたラブデ氏の目にもそうした危険は余りにも明白だった。堆積したごみの高さは50メートルに達し、処分場関係者の話ではあと2年以内に処理能力が限界になる恐れがあるという。

<視界に入らず気にかけない>

面積が81ヘクタールを超えるバンター・ゲバング処理場は1989年に稼働を開始。ジャカルタ市にとって唯一の埋め立て処分場で、規模は東南アジアで最も大きく、約100台のブルドーザーが配備され、800人が正規職員として働いている。

そのほか6000人前後の非正規労働者(一部は子連れ)がごみの山をかき分け、リサイクル可能な資源ごみを探し出す仕事に従事している。ただ、乾期には定期的に火災が起き、雨期にはごみが崩れて処分場の敷地外に散乱する。

ある職員は、バンター・ゲバングで昨年処理したごみは1日当たり7500トンと、15年の6400トンから増加したと説明。トムソン・ロイター財団に「今の状況が変わらないなら、2年以内に処理能力の上限を迎えるだろう」と指摘しつつ、そうなっても対応策は立てられていないと付け加えた。

ジャカルタには約2000のリサイクル施設があり、各世帯はごみの分別とリサイクル回収拠点を利用するよう奨励されている。ただ、家庭から直接ごみを回収するサービスはほとんど存在せず、企業は自らの廃棄物を管理する責任を負うが、一部の業者は不法投棄を行っている。

ジャカルタ市内のショッピングモールや生鮮品市場などで、政府がレジ袋の使用を禁じている措置も実施率は低い。

手数料を取ってごみを集め、リサイクル施設に送るウェイスト4チェンジの創業者、モハマド・ビジャクサナ・ジュネロサノ氏はジャカルタのごみ問題について、規制実施の緩さと官民連携の欠如、責任ある廃棄物処理のための資金面での公正かつ適切な仕組みが整備されていないことが原因だとの見方を示した。

ジュネロサノ氏は、ジャカルタ市民がごみ問題を「視界に入らず、気にもかけていない」と指摘。規制を実施する力も乏しく、「ゲームのルールが存在しない」と苦言を呈した。

<今後の課題>

国連環境計画の担当者によると、インドネシアで18年に生み出されたごみは6579万トンで、その44%が食品関連だった。

全体で72%が処分され、28%は未処分。処分済みの中では69%が埋め立てで、リサイクルは12%にとどまっている。

この担当者は、インドネシア国民の半数以上が都市で暮らしているため、政府や産業界、市民にとってごみ処理は重要な問題になっていると強調。ごみの分別を促進する政策を優先的に導入するほか、食品ロスとごみを減らし、清掃事業に従事する人たちの教育・支援を行うよう提言した。

専門的な訓練をすれば、リサイクル率は上がるし、リサイクル品の質も改善される可能性があるほか、現場で働く人たちの収入増加にもつながるという。

ラブデ氏の場合、においに関する苦情などでこれまでに3回も処理施設の移転を強いられた。それでも現在の場所に根を下ろして3年が経過し、大手酪農メーカーやごみ収集事業者、生鮮品市場運営者、さらには200の家庭などから生ゴミを受け取っている。資金が確保でき次第、事業を拡張したい考えだ。

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