朝ドラでも“生理”の話題に切り込むNHK、「またかよ」と言われても続ける理由を広報に聞いた
週刊女性PRIME / 2024年4月18日 6時0分
NHK連続テレビ小説『虎に翼』の第11話が15日に放送され、番組半ばで、布団から起き上がれなくなって学校を4日休んだ主人公・寅子(伊藤沙莉)の様子が描かれた。その原因は、寅子の生理が人より重いせいだという。
「驚きましたよ。これまでの朝ドラで、主人公が生理でつらそうにしているシーンが描かれることなんて、一度もありませんでしたから」(テレビ誌ライター、以下同)
朝ドラ『虎に翼』で生理シーン、なぜ?
朝ドラといえば、見ている人に「今日も一日がんばろう」と活力を与える番組。たしかに、生理のシーンはあまり見た記憶がないが、『虎に翼』で生理の話題が持ち出されるのは、この日の放送だけではないようだ。
「今週、何回か出てくると聞いています。もっと直接的な表現のセリフもあるらしいので、『虎に翼』の制作スタッフはかなり意識して、ストーリーの中に生理を組み込んでいるのだと思います」
『虎に翼』は、伊藤沙莉演じる寅子が日本初の女性弁護士を目指す物語で、現在は放送開始から3週目。大学女子部の学生時代を演じている段階だが、特に生理痛やPMS(月経前症候群)といった婦人科系の疾患を取り上げるストーリー展開ではないので、唐突感は否めない。
なぜそこまでして、朝ドラで生理を取り上げる必要があるのだろうか。NHKにその理由を問い合わせると、以下のような回答がきた。
《「生理」に関わる諸問題や情報などをお伝えしていくことは、誰もが生きやすく、多様な生き方が認められる社会実現にとって大切なことの一つと考えています》(NHK広報局)
原田泰造が生理用品メーカー勤務という設定のドラマ
じつはNHKは近年、さまざまなコンテンツで生理のことを取り上げている。ドラマだと、たとえば昨年(2023年)の3月に放送された原田泰造主演のドラマ『生理のおじさんとその娘』。原田演じる生理用品メーカーの広報マンがテレビで「僕は娘の生理周期も把握している!」と発言し炎上、娘が家出してしまうという物語だ。
また、女優の水原希子がナビゲーター役になって世界の生理事情を紹介する「ハロー! 生理 世界で聞いた5つのストーリー」というドキュメント番組(2021年放送)や、NHKのスタッフが自分の生理のことを赤裸々に語る「#生理の話ってしにくい」というWEBコンテンツもある。
NHKが生理のことを多く取り上げるので、SNS上では「また生理かよ NHKいい加減しつこい」といった意見もあるが、さきほどの原田泰造のドラマ『生理のおじさんとその娘』を演出したNHK局員の橋本万葉さんはインタビューでこう語っている。
《私たちは、生理と共に生きています。現代のひとが生涯で経験する生理の数は約450回。その450回がいつも恥ずかしくて、痛くて、憂鬱な時間になってしまうなんて、いくらなんでも辛すぎる》
《生理をオープンに語ることだけが良いことだとは思っていません。でも、困ったときに話せる環境が整っていれば、悲しい思いをする人は減るかもしれない》
人前で話すことはどうしてもタブーとされがちな生理。大事なのは、少しでも話題に出して、タブー視するこれまでの風潮を減らすことなのだという。
《このドラマをきっかけに一つでも多くの「生理」についての会話が生まれたら、とてもうれしいです。そういう小さな会話を重ねていくことで、少しずつ当事者と非当事者が歩み寄って心地の良い環境ができていくのだと思います》
NHKにとって生理は重大問題
こういった考えは橋本万葉さん一人のものでなく、NHK全体のものでもある。新型コロナウイルスの感染拡大による家計の困窮によって生理用品を十分に購入できない女性が浮き彫りになった〈生理の貧困〉についても、NHKは2021年4月にいち早く『クローズアップ現代』で取り上げた。
また、国が音頭をとっているSDGsの目標のひとつ「ジェンダーの平等の実現」とも生理の問題は深くかかわっているため、SDGsへの貢献を誓う公共放送のNHKとしては無視できない話題なのだ。
ちなみに、さきほどコメントを紹介した橋本万葉さんは、『生理のおじさんとその娘』だけでなく、朝ドラ『虎に翼』の演出も手掛けている。
そうでなくても生理のことを広く伝えていきたいと思っているNHKが、看板番組である朝ドラの演出スタッフに、生理に“使命感”を持っている橋本さんを迎えたのだから、今週の放送のような展開になっても不思議はないのかもしれない。
「ただ、そうは言っても、生理の話はまだまだ話題にしづらいことだと感じている人も少なくないと思います。民放だと、視聴率やスポンサー離れを気にして、なかなかできないことなので、そこはさすがNHKだと思います」
生理に関してのNHKの孤軍奮闘は、しばらく続きそうだ。
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